
自分も、このままプレイヤーとして一生を終えていいのだろうかと一時期悩みました。まさにスポーツ選手と同じで、ディーラーという職業も決められた枠の中では高給をもらえても、一歩世の中に出るとほとんど応用がきかない感じなんです。
鷹鳩:私もごくたまにですが、この仕事って意味があるのかなと思うときがあります。ものすごく虚しくなるときがあるんですよね。
─私の知り合いで昔ディーラーをされていた方も、まったく同じことを言っていました。実体のないものを追い求めていることが虚しい、って……。
鷹鳩:まさにそうです。僕の先輩は為替ディーラーをやめて、いま事業会社につとめています。実体のある仕事がしたいって、エジプトだかサウジアラビアで高層ビルを建設してますよ。私がブログを書き始めたのも、そういう虚しさを消化するためだったかもしれません。個人投資家の役に少しでもたてたらと。
YEN蔵:僕も同じです。あまりよく知られていない金融の世界にたまたま自分は身を置いていた。だからそれを伝えられたらと思いました。
─それにしても、FXは相当浸透しましたよね。1998年の外為法改正から10年ちょっとですが、個人投資家の間で急速に広まり、いまや立派な金融商品のひとつ。プロのお2人から見て、FXが個人投資家の間で広まったことは好感できますか。
YEN蔵:良かったとは思いますが、円安のときに規制緩和されたのはタイミングが悪かったかもしれませんね。外貨預金の感覚で始めてしまった人が多かったのではないでしょうか。
鷹鳩: FXが広まって個人的には助かっていますよ。僕が為替ディーラーになった頃は、すでに個人もFXを取引できるようになっていましたが、取り扱っている会社はほんの数社しかありませんでした。だから当時、自分の職業を説明しても、わかってくれる人はいませんでしたね。「為替ディーラーって何?」「闇金?」なんて、よく聞かれたものです。車のディーラーと勘違いされたこともありましたね。それがいまでは、たいていの人は為替ディーラーという職業をすぐに理解してくれるんです。FXのお陰です。
─YEN蔵さんが現役だった時代は、なおさら理解してもらえなかったのでないですか。